考えたことなどの記録 (土木関係)

◆大学時代
埼玉大学建設工学科で土木・都市・建築を学んだ。
卒業研究のテーマは「暑中コンクリートの初期収縮ひび割れ抑制にセメントの種類と水セメント比が与える影響」で、研究は東南アジアでの実用を目指していた。
実際に東南アジアの研究者の方々と会議をしたり一緒に研究をして、土木と世界の繋がりを感じた原体験であった。
印象に残っている言葉は、飲み会で教授が仰られた「みんなが持っているスマホは毎年のように進化しているのに、土木は全然変わらない。」という言葉で、後々実務を通して、土木でテクノロジーを活用する余地があることを実感した。
また、大学時代に「築土構木の思想(著者:藤井聡)」という本と出会った。この本では、土木の源流は、中国古典の淮南子という書物の「人々の安寧のために土を築き、木を構える」という一節からとった「築土構木」に由来することを前提として挙げ、風土、強靭化、文学、経済学、防衛という幅広い分野の専門家との対談を通して「築土構木」という原点から、土木とは何かについて語る本で、私が土木について考える上で影響を受けた本である。
私にとって土木とは、「人々の安寧のために土を築き、木を構える」行為であり、それはどんなテクノロジーを活用したとしても、土木の原点は、そこにあると思っている。


◆某県庁時代(山間部地域の道路維持/2019年4月~2021年3月)
某県庁の土木職として入庁し、入庁1年目から3年目は県内の山間部で道路構造物の維持管理工事、災害時の対応と復旧工事、地域住民の要望に応える仕事などの仕事をした。

実務を3年間経験して、経験工学で成り立っている土木は、テクノロジーを活用する余地は十分にあると確信した。担当地域が山間部ということもあり、県内では災害の頻度も規模も最大の地域であり、ドローンによる災害現場の調査に力を入れていた。当時の事務所のドローン活用は、河川災害に関する利用がメインであり、道路災害や橋梁の近接目視等にも比較的活用していた。私は道路維持の担当であり、担当内でドローンを操縦する担当であったため災害現場や橋梁の近接目視のためのドローンの操縦を数回経験した。やはりドローン活用の魅力は通常では見られない角度や高度から現場を把握したり、高度からの視点により災害の全体像を把握することにあると思う。
ZOOMを利用してドローンのカメラから見える映像をリアルタイムで遠隔地と共有する実証実験を行い、電波がある場所に限れば、緊急時に現場以外の人が状況の確認が可能なことを確認した。また、接続がリアルタイムであるため、現場にいない人が見たいものを伝えることが出来る。
この結果は 「令和元年東日本台風」 のように重大な災害が多発的に起こった時に、すべての現場を順番に確認する方法だけではなく、地域の協力が得られれば、地域全体に分散的にドローンを配置して、現場を迅速に確認し判断することが可能であることを示している。
これは長期的視点に立つと、「分散型社会の実現」のために重要な視点である。
また、担当地域には測量企業・設計企業でドローンやLiDARの活用に力を入れる企業があり、ドローンの活用が前進している印象があった。

ドローン以外のテクノロジーの活用として、コンクリートひび割れのAI画像判断や、VR・MRの活用等を耳にすることがあるが、まだ地方の現場レベルでは応用段階には至っていないが、活用の価値はドローンと同様に十分にあると実感している。
テクノロジーの利用については、「土木テック」として、今後も勉強していきたい。
人口減少、インフラストラクチャーの老朽化、予算が減少などのマイナス要素も適切にテクノロジーを活用すれば、現状の課題を解決するだけではなく、現状より「強靭な」インフラストラクチャーの構築さえ可能であると考えている。

また最も印象に残っている出来事として「令和元年東日本台風」がある。
担当地域が山間部ということもあり、倒木、道路被災、土砂災害、落石、家屋浸水等が頻発し、被災直後は最大70-80%程度の国道・県道が通行不可な状態になり、被災に関する情報収集・情報提供や復旧完了後の道路の安全確認等、昼夜を問わず対応を行った。

「令和元年東日本台風」発災直後に、50代の上司が事務所の災害対策本部にあるホワイトボードに貼られた管内地図の被災状況 (通行止の路線を赤く塗る。当時管内地図は70-80%くらいの路線が赤く塗られていた。) を見ながら私に語った事を今でもよく覚えている。
「こんな災害は30年働いてきて初めて。規格外だ。これから大変になるけど、この災害で起こる事をよく覚えておきなさい。」
大きな災害を経験した人は、そこから経験を学んで未来に活かす。そう私に伝えようとしてくれたのかもしれない。

「令和元年東日本台風」で、最前線で災害復旧に取り組む多数の地元企業が心強く思うと同時に、災害が発生してから復旧までの数か月から数年に及ぶ過程を体験して、「災害から地域社会を守ること」について考えさせられる体験であった。


◆某県庁時代(山間部地域の地すべり/2021年4月~)
入庁4年目の2021年4月に初めての異動となった。異動先での担当は「令和元年東日本台風」 で被災した「地すべり」復旧工事を担当する部署であった。奇遇な事に、その現場は私が3年間担当した地域であり、被災当時に現場状況を確認するためにドローンで写真を撮影しに行った現場であった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP