デジタル空間に江戸社会の分散化構造をベースにした、バーチャル分散経済圏「バーチャル江戸」を構築し、数百万人規模の都市が機能したら、どんな創発現象が起こるのだろうか。
ポイントは、「中央集権構造」の次のパラダイムである「分散化構造」という文脈のなかで、江戸社会の分散化構造をブロックチェーンのスマートコントラクトによって近似化することによって、空間の制約が無くなると共に、循環経済の流動性とコストの限界費用がゼロに近づき、創発現象による創造的な活動がどの程度増加するかである。
デジタル空間上で伝達されている「情報」は漸進的に身体性を獲得し、デジタル身体、デジタルロール、デジタルアイデンティティが、身体性を持った上で「距離」と「時間」の制約を超えて分散的に伝達されるようになる。
新しい社会的欲求かたちは、SNS時代は「いいね数・フォロワー数」だったけど、xR、トークンエコノミーの時代は「ロール・アイデンティティ・身体の拡張」なのかなと考えている今日この頃。
その際に重要なポイントは、「ロール・アイデンティティ・身体の拡張」のリアリティをどのようにデザインするかである。
都市を情報構造体として捉えた場合の都市のマクロ構造の進化過程についての考察。
①水平型都市
農業社会の水平方向の拡張による都市構造。情報は空間的なスプロールと同様の形態で、スプロールしている状態。
→「都市×紙」
②鉛直型都市
高層建築により鉛直方向に積み重ねられ、機能を集約した合理主義的な都市構造。情報は一定の量までは集約されるが、機能の集約による物理的な弊害が生まれる。(過密、パンデミックに対する脆弱性)
→「都市×インターネット」
③多次元型都市
都市とデジタル空間の融和による空間・情報・文化・商業が多次元的に層積した都市構造。また視覚偏重に構築された都市ではなく、多知覚的に構築された都市構造。情報は物理的・空間的な制約から解放されて高密度に集約され、かつ都市同士はデジタル空間で相互的にアクセスが可能である。都市空間の全ての情報は自律分散構造のブロックチェーンに記録して、ハッキング、改ざんなどに対して強固な構造とする。
→「都市×インターネット×XR×ブロックチェーン」
新しい都市についての考察および制作、構想は、③の都市を前提としている。
商業・生産・文化等による機能の容器としての「機能の都市」から、「物語」を持っていて、都市での体験自体が豊かな価値をもつ「体験の都市」への転換が求められる。
それは、チョコレートを例にとれば、味を味わうだけではなく、どこでカカオが採取されて、どのような人が生産・加工にが変わっていて、どのような歴史の中に位置付けられているかという「物語」を含めた体験を求める昨今の消費傾向からその兆候が見て取れる。
近い将来、都市がデジタル空間と接続される。
その時、どんな物語を紡ぎ、どんな体験を生み出せるかがその都市の未来を決めるだろう。
ミラーワールド完成後の「多様性、雑多性」というコンセプトは、「空間・時間の分散と余白」がテーマになると思う。